個人山行報告

五竜岳

藤井 諭

 

 51日〜4日の日程で後立山連邦の五竜岳を登ってきた。コースは遠見尾根〜五竜岳〜唐松岳〜八方尾根である。五竜岳へ登るのは白馬岳から爺ケ岳まで縦走して以来、9年ぶりであった。安定した天候に恵まれ、残雪の春山を満喫することができた。

52日(日) 神城〜遠見尾根〜五竜山荘 晴

 朝、宿の車でテレキャビンまで送ってもらう。始発を待ってもう100mぐらいの列になっている。スキー組と登山組に分かれて二列となる。登山組は乗る直前で料金を払うためゴンドラに乗るのに手間取っている。アルプス平についたのは850分だった。しばらくリフトに沿って登り、終点の地蔵の頭が915分、ここから先は登山者のみの世界となる。雪はやわらかく、遠見尾根はゆるやかな登りのため、アイゼンなしで登る。一面の雪がまぶしくサングラスをつける。中遠見山が11時、正面に五竜岳が空を突いてそびえる。左には真っ白の鹿島槍ヶ岳がすばらしい。

 西遠見山からは稜線まで真っ白な壁のように見え、延々と登山者の登りが続いて見える。本日の最後で最大の登りだ。前を歩く登山者の足跡をたどり、一歩一歩登るのみだ。1時間以上の登りの連続はきついが、前を見てひたすら前へ進むのみである。登りがゆるくなり、そして水平になると五竜山荘の赤い屋根が見えてきた。予定より1時間早く、14時には小屋に着くことができた。この日の宿泊客は20名と少なめで、ゆったりと泊まれた。

53() 五竜山荘〜五竜岳〜唐松岳〜八方尾根〜白馬 晴

 朝起きて、カメラを持ち小屋の外へ出てみると、ちょうど日の出たところであった。朝日は五竜岳をピンクに染め、その上に月が光っていた。食事後、荷物を片づけておいて小ザックのみで五竜岳をめざす。ここから上はピッケルとアイゼンの世界。朝の閉まった雪にアイゼンがよくきき、ピッケルはキュッキュッと鳴る。下ってくる登山者と交差しながらアップダウンを繰り返すと、突然鹿島槍が見え出す。最後の急坂を登りきると、南北に長い頂上部に飛び出した。9年前の鹿島槍ヶ岳へ向けての縦走以来の登頂だ。山頂では登山者同士で記念写真を撮りあう。威風堂々とした鹿島槍ヶ岳が向かい合い、黒部川を挟んだ向こうにはゴツゴツした剣岳がひときわ目立つ。純白の立山連邦がそれに続く。北は唐松岳から白馬岳へと続く後立山連邦だ。

 再び五竜山荘に下り、荷物をまとめて唐松岳への縦走に入る。稜線上は所々雪が溶けて登山道がむき出しになっていた。アイゼンでは歩きにくいが、アイゼンがないとすべりやすい雪稜が所々あり、外すわけには行かない。特に大黒岳の13本の鎖場は所々凍っている。核心部の牛首の一本の鎖場は完全に氷におおわれており、アイゼンを氷に蹴りこんで緊張しながら通過した。ピッケルはじゃまになるので、しまって素手のほうが良かったかもしれない。この鎖場の連続に手間取り、唐松岳まで3時間もかかってしまった。

 唐松山荘の休憩地でお昼を食べて力をつけ、八方尾根の下りにかかる。ここから急に登山者が増え出す。八方尾根は緊張した縦走路とは打って変わってのんびりムード。広々としたなだらかな尾根が続き、登りの登山者との交差も全く問題なし。9年前に通過した不帰の剣の奥には白馬三山が聳えて見える。振り返ると鹿島槍と五竜がひときわ輝いて見える。第3ケルンに近づくと登ってくるスキーヤーと時々出会うようになる。雪で埋まった八方池を過ぎると白馬八方尾根スキー場は間もなくだ。八方池山荘前から最初のリフトに乗り、2本目で料金を払い、最後のゴンドラリフトアダムに乗った。眼下のスキー場はスキーヤーで賑やかだった。八方の町に下り今日の宿に到着し、予定より1時間早く16時に今回の山行を終えた。

(後記)

 天気が良すぎたため、鼻から下が火傷のように日焼けしてしまった。帽子とサングラスをしていたので目から上は免れたが、口の周りを中心に皮がボロボロに剥がれ、学生たちから奇異の目で見られてしまった。口の周りだけでも日焼け止めを塗れば良かったと後悔している。一方では天気に恵まれたため、満足のいく写真を何枚か撮ることができた。特に朝日でピンクに染まる五竜岳は満足のいくものであった。次回の「風の写真展」をご期待願いたい。