個人山行報告

荒川三山・赤石岳

藤井 諭

 

 822日〜25日の日程で南アルプス南部の荒川三山〜赤石岳を縦走してきました。私にとって30年ぶりの再訪登山で、登山口から標高差2000mの登りは体力が持つか心配でしたが、無事に予定のコースを踏破することができました。今回は息子とはスケジュールが合わず、単独行となりました。

822日(水) 静岡駅〜二軒小屋 晴

 松江から公共交通機関で行くとなると南アルプス南部は時間がなかなか合わず、結局サンライズ出雲で行くことになりました。静岡駅着が早朝の4時半、畑薙第一ダム行きの一番バスまで4時間待ちます。(前日までは早朝便の5時半発があったので残念でした)バスはダムまで延々3時間半、東海フォレストのバスに乗り換えて椹島まで1時間、さらに四駆車に乗り換えて二軒小屋まで30分、合計5時間の長旅でした。今日はここまでです。二軒小屋(右写真)はアルプス風のしゃれたロッジで回りは芝生にベンチ。値段は少し高いですが、檜風呂に豪華な食事と満足感があります。皇太子殿下の宿泊した山小屋でもありました。

823()  二軒小屋〜千枚小屋 雨後晴

 夜中から雷雨となり、朝になってもどしゃぶりがやみません。6人の宿泊者はロビーで皆待機です。7時になって少し小止みになり満を持して出発です。いきなりの急登で雨具の中は蒸し風呂状態。しかし1時間ほど登ったところで雨が上がり、雨具をとって快適な登山となりました。南アルプスらしいシラビソの原生林の中を涼しい風が通ります。万斧沢ノ頭で初めて、塩見岳が蝙蝠岳を従え雄大に見えます。ハイマツが現われだすと森林限界になり、北に間ノ岳・農鳥岳、南に聳える富士山は南ア南部から見るとすぐ近くで巨大です。

 千枚小屋へは稜線から15分下ることになりますが、斜面に広大なお花畑が続き写真を撮りまくりでした。ミヤマシシウド、タカネマツムシソウ、マルバダケブキ、イブキトラノオが咲き乱れます。

824() 千枚小屋〜荒川三山〜赤石岳〜赤石小屋 曇後晴

 今日は荒川三山と赤石岳を縦走する、今回のハイライトの日ですが、雲に覆われて朝の天気が思わしくありません。回復を期待し、5時過ぎに出発し千枚岳へ向かいます。山頂は雲の中、強風で寒く、登山者たちは皆あわてて防寒具です。丸山へのトラバースの斜面が一面にミヤマトリカブトとタカネナデシコの群生する花畑で、気持ちをなごませてくれます。日本で6番目の高峰である悪沢岳に7時半に登頂。登山者同士で登頂記念写真を撮り合います。30年前の登頂ではすばらしい展望でしたが、今日は残念ながら雲の中。

 悪場を一気に下り、中岳への登りにかかったところで、偶然にも岩崎登さんのツアーと出会いました。光岳から縦走して二軒小屋に下るとのこと、若々しく見えました。この頃から雲が上がりだし、振り返ると悪沢岳の姿が黒々と巨大です。そして中岳山頂からは、待望の赤石岳が全貌を現しだしました。思わず万歳、感激の瞬間です。(写真下)

 荒川小屋への下りは再び花畑。ここで印象的だったのはイワオトギリ(黄)とミネウスユキソウ(白)のコントラストでした。小屋で昼食を取り、ここから標高差600mの赤石岳登頂に備えます。大聖寺平から本格的な急坂となり、小赤石岳まで延々と登りが続きます。いくつかのパーティと抜きつ抜かれつで進み、赤石小屋への分岐で荷物をデポし、ナップサックで山頂へと向かいます。そして13時についに赤石岳山頂へ。この山頂は私にとって3回目となりますが、今日のようにスカッと晴れたのは初めて。北は荒川三山の向うに仙丈岳、甲斐駒、白峰三山です。南には聖岳が大きく聳えます。30年前に三伏峠から茶臼岳まで縦走したときは、聖岳の登りでバテてキスリングを枕に寝込んだ記憶が蘇ります。

 赤石小屋への下りは急で、疲れた足に緊張がたまります。標高差450mを一気に下り、斜面を梯子の連続でトラバースし、やっとの思いで小屋に到着したのは16時。本日は11時間の歩行でした。疲れた!

825() 赤石小屋〜椹島〜静岡駅 晴

 今日は最終日です。天気は上々、日の出の風景の撮影会です。正面に聳える赤石岳の斜面が朝日を浴びて真っ赤に染まると、皆一斉にシャッターを切ります。続いて奥の聖岳が染まります。こちらは山肌に影がついて立体的。

 5時半に小屋を出発し、他のパーティや顔なじみになった単独行者と抜きつ抜かれつで3時間、椹島ロッジに到着です。10時半のバスを予約し、シャワー券を買って風呂場へ行きます。3日間の汗を流し、短パンに着替えてさっぱりです。ロッジで遅めのモーニングセットを食べ、すっかり下界の生活にギアチェンジ。再び5時間の長いバス旅行で静岡駅に着き、文明社会に戻って行きました。

(コースガイド)

 荒川三山、赤石岳、聖岳の山域は、椹島や二軒小屋を基点にいろいろなコースが楽しめる。体力のある人は縦走、体力に自信の無い人は途中小屋泊りで山頂を往復することができる。標高差2000mは脅威であるが、うまく山小屋を利用し体力に合わせて楽しみたい。千枚小屋のコースは安全で初心者向き。赤石小屋のコースは小屋から山頂までが急で厳しい。時間もかかるが、夏季は頂上の避難小屋が営業し簡単な食事も影響してくれる。うまく利用すればコース選択も広がる。南アルプスはスケール大きく、標高差600mの縦走は体力が要るが、豪華な花畑が疲れを癒してくれるはず。