日光白根山・男体山

 

 長年の間東京に住んでいたが、日光には観光で東照宮と華厳の滝を訪れただけで、日光連山に登る機会は無かった。3月下旬にその機会を得て、ワクワクしながら出発した。

1日目

 朝の東京駅から新幹線で宇都宮まで行き、日光線に乗り換えて終点の日光駅まで。今日は晴天で、聳える日光連山の残雪が眩しい。湯元温泉行きのバスを待つ。世界遺産の国際観光地らしく、外国人も乗り込んできた。いろは坂にかかると道の両脇に雪が出てくる。中禅寺温泉を過ぎて中禅寺湖を左に間もなく、二荒山神社入口で下車しここから男体山に登り出す。この時点でもうお昼を過ぎ、今日の予定を考えると時間はあまりないが、行ける所まで登ってみることにする。登りだしてすぐ左手に蒸気がもくもく上っている。硫黄の臭いとともに温泉の湯が噴出し、ここが火山であることを認識する。1合目の石作りの鳥居をくぐると、だんだん傾斜が急になってくる。しばらくはシラビソの森の中で視界はない。3合目で一旦林道と出会い、4合目まで雪に覆われたジグザグの林道歩きとなる。ここから視界が開け、中禅寺湖を見下ろしながらの山道となる。5合目から見る湖岸の山々は雪で白く、大きな中禅寺湖の水も氷が張ったように白く輝いて見える。残念ながらこのあたりでタイムアップとなる。元の道を下り、湖畔からバスに乗り、今日の宿泊予定地の元湯温泉へ向かった。

2日目

 宿にはりっぱな露天風呂があり、湯ノ湖越しに雄大な男体山を眺めながらの朝風呂には満足。天気は下り坂であるが、日中いっぱいは確実に持ちそうだ。今回の目的地である日光白根山へと登りにかかる。金精峠は積雪期で閉鎖中、ここ湯元のスキー場から登るしかない。まだ雪が十分に残り、リフト2本を乗り継いで、尾根の末端にドンピシャリ取り付いた。先行者数名の踏み後を頼りに登り始める。程なく傾斜が急となるが、雪が閉まっているためキックステップはきかず、早々にアイゼンを付けることにする。新宿で買ったGRIVELの使い初めだ。今まで使ったタニのアイゼンは25年間使ったが、我が家の博物館行きである。標高差500mを一気に登る急な尾根もあまり苦にならず、アイゼンのありがたみを実感する。外山鞍部からやっと稜線の緩やかな道となり、視界が広がる。昨日の男体山から大真名子山、女峰山、太郎山の日光連山が一望である。右には大きな中禅寺湖がゆったり広がる大展望である。ここで、下山してきた単独行者に初めて出会う。何とか前白根山までは行けたが、その先の奥白根山へのトレールはないとの情報をもらう。天狗平を過ぎて別の単独行者とすれ違う。会う人は皆ベテランらしく、しっかりした雪山の装備をしている。前白根山が前方に見えると吹きさらしの尾根となり、強風で体が振られる。体感温度が急降下し、しっかりと防寒する。山頂直下で2人パーティとすれ違うが、風で互いに挨拶するのがやっとだった。山頂は無人、ピッケルで体をささえながらの写真撮影となった。それにしても、眼前に覆いかぶさってくる奥白根山のボリューム感には凄さを感じる。雪の山肌に、火山らしくゴツゴツした黒い山塊が剥き出る。振り返ると富士山型の端麗な男体山が対峙する。食事の採れる場所ではないため、この先行くのは無理と判断して早々に下りにかかる。元の天狗平付近に戻ってやっと強風がおさまり、深雪の中で食事をする。暖かいものを採ると、凍った体が生き返る。この頃から雪がちらつきはじめ、良く見えていた男体山が霞むようになった。予報通り天気は下り坂だ。早めに下ることにし道を急ぐと、急にトレールがなくなった。道をはずれたらしい。GPS地図で現在地を確認すると、確かに登りのルートをはずれているが、真直ぐ進めば元の道にぶつかることも地図のトレールからわかる。5分のラッセルでピッタリもとのルートにぶつかった。改めてこういう時のGPSの威力はスゴイと思った。急坂を登って来た女性を含む若者3人パーティに話しかける。今日は白根山の避難小屋に泊まり、明日奥白根山に立つそうだ。若さが輝いて見える。稜線は強風なので気をつけるよう言って別れた。急坂の下りは緊張の連続だ。やや疲れた足に、下りの傾斜がきつく見えてしまう。アイゼンを確実にきかせ、ピッケルを構えてゆっくりと下った。スキー場の音楽がだんだん大きくなり、ゲレンデのカラフルなスキーヤー達が見えると、尾根の末端の終点だ。たくさんのスキーヤーの注目を受けながら(?)ピッケル片手にスキー場を歩いて下る。湯元温泉の賑やかな湯元の町中に入って今回の山行を無事に終えた。戦場ケ原をバスに揺られながら残雪の日光連山を振り返り、改めて充実感をおぼえた。