祖母山(1756m)

藤井 諭

 

 九州の祖母山は山自体が神であると言われている。健男霜凝日子(たけおしもこりひこ)と言い、霜を結ぶ勇猛な竜蛇身の男神であると言われる。山頂三角点標識の横にある石祠がその上宮である。祖母山は古くは「ソホリヤマ」と呼ばれ、朝鮮系の言葉で「神の居ますところ」を意味し、韓国の首都ソウルと同じ語源という。このソホリが祖母に転じたとの説があり、祖母にちなんで「姥岳(うばだけ)」と呼ばれることもある。

 320()に初めてこの山に登る機会を得て、高千穂町に前泊した。山とは関係ないが、宮崎県の訪問は初めてで、これで47都道府県全てに宿泊したことになる。最初に訪れた天の岩戸は、残念ながら時間が遅く閉まっていた。朝に宿を出て、まず有名な高千穂峡を見物する。早朝で観光客は少なく、静かに美しい渓谷を楽しむことができた。この高千穂峡は、祖母山に続く大崩山群の造山活動の中で、五ヶ瀬川によって刻まれた渓谷だそうである。

 カーナビの案内で宮崎県の五ケ所高原へ入り、大谷川沿いの林道を一の鳥居の駐車場まで入る。ギリギリの道幅で対向車が来たらアウトだ。またバウンドするので、車高が高くないとこすりそうだった。ここから歩いて北谷登山口まで入ると、さらに駐車場があり先行車が8台止まっていた。島根ナンバーで私と同じ車種のアウトランダーもあった。

 ここから千間平コースをとり、約1時間で千間平まで登ると傾斜はゆるやかとなり、道がぬかるんで歩きづらい。国観峠から上は残雪が現れ、日蔭は凍っている。雲の中に入るとまったく展望がきかなくなった。9合目小屋が新しくすばらしいと聞いていたのでそこで昼食を予定していたが、分岐からの雪道は誰も歩いた形跡がなく、ラッセルもつらいのでパスしそのまま山頂に至った。登山口からの所要時間は2時間半だった。

幸い山頂の東側は風がなく休憩ができたが、すばらしい!と絶賛される眺望はまったくなかった。それでも百名山であるのか、次々と登山者が登ってくる。大分県の尾平登山口からの登山者が多いようだ。

 下りは雨具を付け、風穴コースをとることにした。いきなり急な尾根の下りとなる。北側の斜面は所々凍っているため、アイゼンを付ける。1月に大山のモンベルで購入した四つ爪のアイゼンは、ガッシリ固定されなかなか調子が良い。岩稜の巻き道は、ササヤブをかき分けて進み、しかも雪がしっかり残り歩きづらい。コースの名前である「風穴」は、岩の大穴で雪が積もって凍り、ハシゴ伝いに慎重に通過した。このコースは急な尾根をまっすぐ下るため、2時間で北谷登山口に下りることができた。

登山口には出発前に見た島根ナンバーがまだ止まっていた。どこかですれ違ったかもしれないが気になった。雨がひどくなってきたので急ぎ足で車に戻り、次の訪問地である熊本へと向かった。